トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
「篤さんって、私に分からないことを何でも見透かしてるみたいですね。

やっぱり、そういうところは怖い人かも」


彼女の真っ直ぐな心には受け入れ難いことだろうと思いながら、自分の願いを口にする。


「君と俺とで、拓真を開放できると思うよ。


拓真に絶望を与える、その共犯になってほしいんだ。」



「撮影の時の言葉と同じ……」


「そうだよ。あの時から思っていた事なんだ。


『恋は、罪深きもの。


私と共犯者になっていただけませんか?』」


改めて伝えると、彼女の瞳から涙が溢れた。


「罪なんですか?」


「そういう恋もあるってこと。

一途でひた向きな想いだけが恋愛じゃないさ。失恋に泣くくらいなら、君も少しくらい染まればいい」


何に?と問いかけるように顔を上げた彼女にキスをした。

驚いて息を飲んだようだったけれど、戸惑うだけではっきりとは拒絶しなかったので強引に続ける。

ロミオとジュリエットには、その唇で私の罪を清めて欲しいという台詞があるけれど、今の自分がしているのは真逆のことだ。


俺の想いに染まれ。俺の罪に染まれ。


言葉で言うかわりに唇を重ねた。
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