トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
瑞希に仕掛けられた盗聴器は電池で動くタイプのもので、定期的に電池を交換する必要があるらしい。犯人はおそらくその作業をするはずなので、俺はその瞬間さえ逃さなければ良い。


犯人にとってみれば、瑞希は篤と共演するだけでなくプライベートまで一緒にいることを知ったばかりだ。瑞希への憎悪は高まっているだろう。犯行のチャンスさえ与えれば、現場を押さえるのは難しくはないはずだ。




「あーもう、ぜんっぜん駄目。この一言だけで良いのに何でそうなるんだよぉ……。」


瑞希への演技指導が行われているブースから、篤の嘆き声がする。篤は瑞希を好きだとはいえ、仕事上では彼女を甘やかしたりしないだろう。


困惑顔で台詞を言い直す瑞希だが、緊張している分余計に酷くなっている。先日の練習は殆ど意味が無かったな……。


「だーかーらー、ゆっくり、しっとり言えば良いだけなのに。そんなにモソモソした言い方は無いだろー……」


ハタから見れば、新人の女の子にプレッシャーを与えて苛めてるようにしか見えない。


「何もそこまで言わなくても」


と周りにたしなめられている篤。
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