トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
「聞き覚えはあるだろう? 盗聴器越しに俺の声も聞いたはずだ。」


「何をっ……言ってるんですか? 放してっ!」


「お前が瑞希をつけ回して、脅迫していたことは知ってるんだ。」


両腕を壁際に押さえつけると、女は被害者のような顔でうったえる。


「こんなことして良いと思ってるんですか?ここには防犯カメラだって」


「そう、カメラがある。お前がカメラの死角だと思っている場所にも、追加してある。


例えば、瑞希のロッカーの中とか。」


女のこめかみが僅かに痙攣する。


「お前が認めなくても、必要な証拠はもう揃っている。じきに警察の手に渡るだろう。」


暴れる女の両手を後ろに回し、頭を押さえて床に伏せさせる。


「俺の用件は、それとは別だ。


例えば、そのSNSの乗っ取りだが、」


タブレットをを奪って確認する。画面がロックされているが、簡単なパターンロックなので、画面の跡を辿れば解錠できた。
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