トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
「で、俺もわざわざサングラス取って表情まで作って病室を聞いてみたのに、なーんも興味ないって感じで、完全に事務的な対応されたんだよっ。

俺はお前のせいで傷ついた!!」


「表情つくるって何なんだ……? 恥ずかしい奴だな。」


兄の呆れ顔にも篤さんは一向に構わず、サングラスを取って流し目っぽく笑って、兄に花束を差し出した。女の人なら、きゃーって思うような笑顔だ。


「こういう感じ?」


「再現しなくていいから。 で、これは何?やけにでっかいな。」


「もちろん、お見舞に。俺とデキてるとでも勘違いされて困ればいいと思って。」


豪華な花束にはメッセージカードが付いていて


“親愛なる拓真へ

君の一日でも早い回復を祈っているよ

愛をこめて 篤”


と記されていた。


満面の笑みの篤さんに、兄はとても嫌そう顔をする。


「瑞希、悪いけど花瓶になるものある? 一応飾らないわけにもいかないし。」


花束を手渡されて、それに合う花瓶を探しながら兄に伝える。


「でも篤さんが死ぬほど心配したっていうのは本当だよ。昨日だって……」


「わーーー!!」


昨日の様子を説明しようとしたら、篤さんの声にかき消された。


「なんだよ、篤」


「今通ったナースのスカートがすげえ短い! あの子が担当ならお前は相当ずるい!!」


篤さんの様子にこっそりと笑ってしまった。

照れ隠しの方向が変だけれど、篤さんは優しいところを指摘されるのが苦手なのかもしれない。


でも、やっぱりすごく優しい人だ。その証拠に、昨日篤さんが巻いていた手首の包帯は長袖のシャツできっちり隠されていた。


昨日は“拓真に文句を言うために大袈裟に”包帯を巻いたなん言っていたのに。
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