トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
「そうだ、お前に頼まれてたもの持ってきたよ。」


篤さんは持っているバッグの中をさぐっている。


「何も頼んでないけど……?」


不思議そうに首を傾げる兄に、篤さんは含み笑いで言葉を返した。


「またまた、そんなこと言っちゃって。」


篤さんが取り出したのは、分かりやすいエッチな本だ。


「お前っ……馬鹿か!?瑞希の前でそんなものを広げるな!」


慌てる兄を、篤さんが嬉しそうににやーっと見ている。


「へぇー。お兄ちゃん、ふーん……。」


「違うってば。瑞希、普通に考えて頼むわけないだろ。」


「そっかー。瑞希ちゃんがいないときに、こっそり渡して欲しかったんだね。ごめんごめん、気が付かなかったなぁ。」


「篤、ほんとに……

俺が悪かったから、許してください。」


兄が謝ると篤さんはますます満足そうに笑って、そのエッチな本を窓辺に飾る。


「これをナースの人に見つけられて、ドン引きされるのも良し。変にやる気を出されるも良し。

拓真がゆっくり快適な入院生活を送るなんて、見過ごせないからなぁ。」


「何だよそれ……」
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