トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
次の日も、その次の日もたくさんの人が兄のお見舞いに来た。

兄の休業が小さなネットニュースになったので、兄の友達が心配して続々と来てくれたのだ。もちろん、怪我の理由は伏せられている。


高校の剣道部で一緒だった人達は私を彼女と勘違いして、熱心に話しかけてくれた。


「こいつ、こう見えていい奴なんで捨てないでやって。」


「……彼女じゃなくて、妹。」


と兄が訂正すると、「それなら連絡先教えて」「コンパしよう」と態度が変わって面白い。


「瑞希、相手をしなくていいぞ。」


と言う兄を、その友達はシスコンと言ってからかっていた。


「兄は部活の時どんな感じだったんですか?」


「こいつ、生意気にファンの女子がいっぱいいてさー。

集団で試合の応援とかに来るんだけど、あほだからずっと自分目当てだって気付いてなくて。

普通に剣道の試合が見たくて応援に来てるって勘違いしてたんだよなぁ。そんな女子いねーよ。」


「あはは、確かに……、兄はそういう天然なところがありますよね。」


「そういえば、よく試合してた高校にチャラチャラした女顔のイケメンがいなかった?そいつとの試合だとさらに女子が集結してたなぁ。

あいつ、自分以外に女子がきゃーきゃー言うなんて信じられないって感じで本気でショックを受けて、変な奴だったよな。

拓真にやたらと対抗心を燃やしてたけど、あいつのこと覚えてる?」


「あいつは昔っからの知り合いで。小学校が途中まで一緒だったんだ。

試合で再会したとき以来、今もずっと絡まれてるよ。」


“チャラチャラした女顔のイケメン”が、誰だか分かりやすくて笑ってしまう。
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