トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
「今のあいつは、こんな感じ。」


と、兄は雑誌に載ってる篤さんを友達に見せた。紙面にはインタビュー記事と、猫と一緒に撮影されている篤さんの写真が載っている。


「うわっ、見たことあるこの人。すげー、まさかあの時のあの変な奴が。かっけーなぁ……。」


篤さんの写真をまじまじと見る友達に、兄も嬉しそうに笑う。


「今も変な奴だよ。」


篤さんを語る兄は、何故かちょっと自慢げだ。





他にも、大学のサークル友達もお見舞いに来た。その中にはとても綺麗な女の人もいて、兄と親しげに話す様子に私は気が気ではない。


「拓真くんが載ってる雑誌はいっつも買ってるんだよ。


今度映画にも出るんでしょ? 楽しみだけど、あんまり有名人になったら淋しいなー。」



兄を見つめる女の人の目は、ぜっっったいに兄を好きだと言ってる。私は同類の勘で分かるのだ。


案の定、彼女が置いていったお土産のスイーツにはいかにもなメッセージカードが付いている。


“拓真くんへ

早く元気になってね
退院して、もし時間があったら
二人で会えたら嬉しいな

レナ 連絡先:xxxxxx”
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