トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
「ふーん、真面目だねぇ。真面目過ぎて余計なことまで背負いこんでなきゃいいけど。」


その時ちょうど弁護士さんとの打ち合わせが終わり扉が開いた。病室から篤さんの姿を見つけた兄は、嬉しそうに笑う。


「忙しそうだから、こっちにはもう来ないかと思ってた。」


「ほんっとに忙しいよ。お前の分まで働かされてるよ。

山瀬さんが、復帰したら馬車馬のように働かせるから覚悟しろって言ってたぞ。このツケは体で返せって。」


「うわ、山瀬さんホントそういうこと言いそう。怖いな。」


「でも、実際殆ど歩けてるみたいだし、もう退院も近いんだろ? そしたら仕事復帰だって」


「……どうなんだろ。まだ予定聞いてない。」


「お前という奴は!快適な入院生活で仕事が嫌になったな? やっぱりナースのおねーさんたちに可愛がられてるんだな?」


「どうしてすぐそういう発想になるんだ……。」


「俺は休みが無さすぎてやさぐれてんの。この後もすぐ仕事だし。

せめてもの癒しに瑞希ちゃんを送ってから行こうと思うんだけど、それくらいいいよね?」


「悪いけど、今日は無理。瑞希に話があるから。」


「え、そうなの?お兄ちゃん。」


話があるなんて聞いていなかった。突然どうしたんだろう?


篤さんは、「拓真のけち」と言いながらも、時間が無いようですぐに仕事に戻った。兄は、文句を言う篤さんを嬉しそうに最後まで見送っている。


「お兄ちゃん。話ってなに?」
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