トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
14 消失
翌日、いつも通りに病院に向かうと、あれだけ華やかだった病室が跡形もなく空室になっていた。


「えっ? 何で……。」


事情がわからないのでナースステーションに聞きに行く。


「兄の病室、じゃなくて黒須拓真の病室なんですが、移動したんですか?」


「黒須さんですね。今朝、転院されましたよ。」


「まさか、容態が急変したんですか!?」


「いえいえ、かなり回復なさってましたので、もうそういうことはないですよ。ご本人のご希望です。」


「どちらに転院したんですか?」


そう聞くと看護士さんは病院名を教えてくれたけれど、


「ご家族なら直接お話されているんじゃないですか」


と、不思議そうに付け加える。



確かにそうだ。急に勝手に転院するなんておかしい。


兄に電話をかけたけれど、電源が入っていないのか繋がらなかった。


メッセージも送ってても、“既読” のマークは付かない。


わけがわからないけど、とにかく転院先の病院に向かう。電車に乗っている時には篤さんにもメッセージを送った。


『今朝、急に兄が転院したと聞きました。転院先はxxxxxxです。

兄に連絡がつかないのですが、篤さんは何か知っていますか?

お忙しいところすみません。』


兄の気紛れだろうか。病院に嫌な人でも来たのかな。

色々な理由を考えてみても、心の奥底では嫌な予感が消えなかった。
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