トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
俺が引き取られた当初の瑞希は、まだ幼く太陽のように明るい子供で、そんな君が少しずつ成長するのを側で見守るのは、とても幸せでした。


しかし、君がだんだん綺麗になるのが、同じくらい辛くもありました。


いつからか俺は瑞希のことが好きで、兄として振るまいながらも自然と目で追いかけて、君を欲しがるようになりました。


そして、そんな自分が堪らなく嫌でした。


俺は君を諦めようと試行錯誤して、失敗することを何度も繰り返していました。


だからあの日、瑞希が俺を好きだと言ってくれた時、本当は目が眩むほど幸せだったのです。


あの時、女性としての君に興味など無いような事を言いながらも、俺の行動は支離滅裂でした。それが余計に瑞希を傷つけてしまい、本当に悪いことをしたと反省しています。


でも、ひとつだけ言わせてもらうと、あのときは瑞希だって反則です。反則的に可愛く、心を奪われ、とても苦しかった。


けれどその苦しさも含めて、今となっては瑞希がくれた大事な思い出のひとつとして、胸にしまっています。
< 169 / 235 >

この作品をシェア

pagetop