トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
「私のこと、もう少し頼りにしてくれてもいいのに。」


「頼ってないんじゃなくて、強がりなんだろ。あいつなりの。」


「篤さんにはいつも甘えるくせに。」


「ははっ。よくわかってるね。

さっきの手紙にあったけど、『派手な外見とは裏腹に、とても繊細で誠実な奴』とか思われてたんだ、俺。うける。」


ひとこと伝えるごとに、駄々っ子のように篤さんの手にこぶしをぶつけると、全部笑って受け止めてくれた。


「これから篤さんを頼りにするといいなんて言って、お兄ちゃんはそれでいいの。」


「まさか。本心では嫌に決まってるだろう。

これまでだってあいつはずーっと、瑞希ちゃんに近寄る俺に怒ってたよ。」


手紙を読むまで、兄は保護者として私を心配しているだけだと思っていた。


「昨日だって、二十歳の誕生日のお祝いは何が良いって聞いておきながら、その前にいなくなっちゃうんだから……。」


「そんな話をしてたのか。

って、待て待て。君の足元に転がってるのは何だ?」


篤さんの視線の先に、配送されたままの箱があった。


手紙の内容の衝撃が大きすぎて忘れていたけれど、一緒に送られていたんだった。中を開けると、こちらにも小さなカードが添えられていた。


『もうすぐ二十歳になる瑞希へ


少し早いけれど、誕生日おめでとう。

昨日、瑞希が伝えてくれたささやかな願いすら、叶えてあげられずにごめん。

少し前に、君に似合いそうだと思って買っておいたプレゼントになりますが、こちらで代わりとさせてください。


拓真』
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