トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
ひとしきり涙を流して、伏せていた顔を上げる。


「瑞希ちゃんの誕生日はいつ? 何を拓真に頼んだの?」


「来月末の、8月31日です。

料理を作ってケーキを焼いてってお願いしたんですけど、そういえばあの時も兄は少し悲しそうな顔してたかも。」


「拓真にしてみれば、それは叶えられない願いだからな……。

それなら、瑞希ちゃん誕生日暇だよね。予定空けといて。お祝いするよ。」


「お祝いって気分にはとてもなれないんですが……。」


「それでもいいよ。先々の予定でもないと君まで失踪しそうなんだもん。

俺を安心させると思って、少し協力して。その日は予定を空けて待っていること。いい?」


頷くと、篤さんは優しい瞳で笑ってくれた。


「良かった。

……俺はそろそろ仕事行かなきゃいけなくて。

一人にして悪いんだけど、ちゃんと食って寝るんだよ。」


そう言うと、篤さんは帰っていった。こんな時間から仕事だなんて、私が心配をかけたせいで徹夜になってしまったんだ。


篤さんの言うように、せめてちゃんと食べて寝よう。


シャワーを浴び、何か適当なものを詰め込むように口にしてベッドに入る。眠たくはなかったので、キラキラと輝くネックレスを飽きることなく見つめていた。


「Te amoって、愛しているって意味なんだ……

いなくなっておいて、今更そんなの……酷いよ」
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