トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
その日から、数日おきにふらっと篤さんが家に訪れるようになった。


「俺は、あいつみたいに料理できないから。」


と言って、お洒落なスイーツやロケ先で訪れたというお店の美味しそうな食べ物を持ってきてくれる。


あまり食事を取っていないのが、篤さんにばれてしまっているようだった。


篤さんがいつ来ても私は家にいるので、


「たまには友達と遊んだりすればいいのに。夏休みなんでしょ?」


と呆れられたけれど、私は何もする気がおきなかった。


それに、篤さんの以外の誰にも会いたくなかった。当たり前の生活を送って、笑っていられる幸せな人に会いたくなかったから。


予定といえば、たまに兄の代理人だという弁護士の人に会うくらい。


最初こそ兄の所在を問い詰めたり、私からのメッセージを預かって貰おうとしたけれど、その人の冷徹な態度にそのうち諦めてしまった。


「あなたは兄の大学の先輩なんですよね?
止めさせてください、こんなこと。今すぐ兄に会わせて。」


「私は依頼人から請け負った案件を進めるためにここにおります。また、私に関するそういった個人的な情報は、一切お伝えできません。」


何を話しても、私はただの無力な子供だと思い知らされるばかり。
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