トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
迎え盆の頃にお墓参りに行くと、まだ新しい花が供えられていた。こんなことをする人は一人しか思い当たらない。


「お兄ちゃん……」


しばらくぶりに兄の痕跡を見つけて、幸せ過ぎて涙が出た。良かった、もう外を出歩けるくらいには回復したんだ……。


父と母には悪いけれど、花束から一輪だけ花を抜いて家に飾った。


物置から盆提灯を取り出して、仏前には果物を供える。去年は兄と二人で行ったお盆の儀式。


あの時は両親が亡くなってまだ日が浅くて、これ以上寂しいことなんか無いと思っていたのに。今年は去年が懐かしくなるほど空虚だなんて。


送り盆の日になり、夕方に送り火の準備をしていると篤さんが来てくれた。今日はいつもの玄関先ではなくて、家に上がってもらう。


「こういう習慣はよく知らないんだ。俺が勝手に混ざって良いのかも、よくわからないんだけど。」


そう言いつつも、篤さんは仏前に和菓子を供えて美しい所作でお線香をあげていた。姿勢を正した篤さんは長い間手を合わせていて、その姿は兄に少し似ていた。
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