トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
夕陽が落ちた頃に送り火を始めようとしたけれど、いざ火を焚こうとすると、思ったよりも火の勢いが強くて上手くいかない。


「熱っ」


「危ないって、火の粉舞い上がってるから。火傷してない?」


「大丈夫……です。ちょっと髪が焦げただけ。」


確かめると、前に垂れた髪の一部がざらついた手触りになっている。


結局、篤さんが火を焚いてくれて、火の勢いが落ち着くのを待って縁側から眺めた。


並んで座っている篤さんとただ揺れ動く炎を見つめ、小さく火がはぜる音を聞いている。火が消えるまで、どちらも何も話さなかった。


* * *


「髪、少し切れば気にならなくなるよ。ハサミある?」


篤さんが私の髪を一筋すくい上げて、しげしげと眺める。


「いや、さすがに篤さんに切って貰うわけには……」


「大丈夫。前は自分の髪も切ってたし、わりと得意だから。」


結局篤さんに押しきられるように、洗面台の前で髪を切って貰っている。
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