トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
「その罪悪感って俺のため?」


篤さんの声はワントーン低くなり、目を開けると鋭さを増した視線に射抜かれた。


「それとも自分のため?

俺を利用するようで、汚い自分に耐えられなくなった?」


「私なりに、前よりずっと篤さんのことをちゃんと考えるようになったからです。

考えて、これは良くないことだと思って。一方的に甘えるだけなんて、あざとくて。」


「ふうん、そんなこと。」


篤さんは怒りの滲んだ声で呟き、わたしを椅子から抱え上げる。


「あのっ、篤さん?……」


篤さんはじたばたと動く私に取り合わずにリビングまで歩き、私をソファへ下ろしてそのまま体を組敷いた。


目の前に私を見下ろす瞳と長い睫毛が見える。怒っているというよりは悲しげな表情に変わっていた。


「君があざとい女だって言うんなら、

俺は女の傷心につけこむ意地汚いハイエナだ。世間的には俺の方がずっとあくどいよ。」


篤さんの体温を全身に感じて、息苦しいような熱さに包まれる。


「でも、客観的に見て正しいとか正しくないとか、重要なこと?

君と俺との関係なんだから、他人の価値観なんてどうでも良くない?


俺は、瑞希ちゃんを甘やかすって言ったんだ。それが一生でも構わないと。


君の気持ちが俺に向いてなくても、側に居られればそれで良いって意味だ。本気でそう思ってる。


それでも、君は人としての正しさの方が大事か?」
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