トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
また警備員が近くを歩いていたので、見つからないように手近な扉に入ると、そこは病室のごみが集められた雑多な物置のようだった。


著名人が多く利用している病院だけあって、大きな花束や贈り物の空き箱などがやたらと多い。中には開封もせずに捨てられているものもあるくらいだ。



そのような、ごみと言っても高級感のあるガラクタの中、全くその場にそぐわない異質なものを見つけた。





エロ本だ。



具体的には、俺が拓真に入院見舞いとして嫌がらせに渡したエロ本だった。


「馬鹿だろ、あいつ……

こんな、こんなんで俺に尻尾つかまれてやんの。」


拓真が間抜け過ぎてひとしきり笑った。笑いすぎて涙が出た。一旦涙が流れると、止めるのにしばらくの時間が必要だった。




涙が止まった頃、好奇心の湧くまま中を確認してみる。



「開いた跡が無い、だと……!?」


読まずに捨てるとは、失礼な奴め。せめて袋とじをびりびりに破く可愛げは見せて欲しいものだ。


エロ本と重ねて捨ててある映画の情報誌はかなり読み込まれていて、栞のようにレシートまで挟んである。その箇所を開くと俺のインタビュー記事だったので、若干引いた。


「俺はいろんな意味でお前のことが心配だよ……」


エロ本より俺の紹介記事を読むとは男として如何なものか。この変態ツンデレめ。


拓真に心の中で適当に謝りながら、その付近にまとめられたゴミを調べる。明らかに女の子からと思われる手紙の束を避けたら、海外にある調理師のための教室の資料が出てきた。


「それっぽい資料発見か?」


嬉々としてその資料を集めていたら、足音が近づいてくる気配がする。今見つかるのはマズイので物陰に隠れた。
< 188 / 235 >

この作品をシェア

pagetop