トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
機内の前方にあるゆったりとしたエリアのシートに座ると、篤さんはサングラスを取った。


少し肌寒いので貸してもらったパーカーを羽織ると、淡い香りに包まれる。きっと篤さんの首筋から香水が移ってるんだ。


その香りは、篤さんに抱き締められたときにだけ感じられるごく淡い香りで、私はすっかり記憶してしまっている。不意打ちのように胸が締め付けられる感覚がして、ぎゅっと目を瞑る。


「大丈夫?」


「大丈夫ですっ。なんでもないです。」


私の挙動不審な様子に篤さんは柔らかく微笑んだ。パーカーの袖にすっかり隠れている私の手を引き出すと、篤さんの手を重ねる。


「少し、元気になってきたみたいだね。

この一ヶ月ちょっとの間、辛かったでしょ。今日だけは全部忘れて楽しもう。」



「はい……ありがとうございます。」


那覇空港を出ると、いっそう眩しい日差しが照りつけ、所々に咲いているハイビスカスやシーサーの置物が南国ムードを高める。


「沖縄に来るの初めてなんです。海も綺麗なんだろうなぁ。

これからどうするんですか?」


珍しいものばかりなので、きょろきょろと辺りを見渡す。


「これから車を借りて、しらばらく北へ。国道から海が見えるから、気分は良いと思うよ。」
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