トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
しばらく走っていると、見渡す限りの海と白い砂浜が見えた。大きなリゾートホテルが点在していて、凪いだ海から吹く風が心地良い。


「ここは恩納村。沖縄本島で一、二を争うほど海が綺麗な所だよ。せっかくだから近くで海を見ていこ?」


桟橋に行くと、澄んだ海から泳ぐ魚の姿がよく見える。篤さんがその場で売られている魚のエサを撒くと、たくさんの魚が姿を見せた。


「いっぱい集まってくるなぁ。わりと旨そうなヤツもいるね。」


「旨そうって。魚が怯えますよ?」


篤さんはいたずらっ子のように笑って魚を眺めている。しばらく一緒に魚を眺めてから、砂浜に向かった。


さらさらとした砂浜はサンダルでは歩きにくくて、篤さんに手を繋いで貰ってゆっくり歩く。すぐそばまで静かな波が来て、足元の砂が流れた。



「日が暮れる前に行き先を決めないとね」


「両方、少しずつ行くっていうのは……?」


「それが出来れば良いんだけど、そういうわけにはいかないから瑞希ちゃんに決めて貰おうかな。」


「どんなところですか?」


篤さんはそれには答えないで、海の水に触れた。その横顔はびっくりするほど淋しそうだったので、見ているだけで胸が痛くなる。
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