トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
「到着……と言っても、ここはどこですか?」


「やんばるって言われてる地域で、あの建物はペンション件、レストランだね。けっこう人気なんだって。


ここから見えるかなー」


篤さんは、遠くを見るように額に手をかざしている。

こんなに遠くまで来たのに、辺りには何もないあのひっそりとしたペンションが目的地?


「何を見てるんですか……?」



「お。見えた!

いる、ほんとにいた!」


篤さんの視線を追ってもオープンテラスが見えるだけ。


「何がいるんですか?」


「……稀少生物? 見た方が早いよ。」


「変わった生き物とかよく知らないので、私が見てもわかるかどうか……」


篤さんが私の頭の向きを変えてあっち、と指差した。


白いテラス席と、咲き乱れる南国の花。夕方に近い時間のせいかお客さんの姿はまばらだ。素敵なレストランだけれど、変わったものは見当たらない。


暇な時間帯のせいか、店員さんがのんびりと花に水をあげている。背の高い、折り目正しいシャツとエプロンを身につけて、よく日に焼けた、精悍な顔立ちの……


「お兄ちゃん!?」
< 201 / 235 >

この作品をシェア

pagetop