トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
18 再会
篤さんが押してくれた背中に助けられるように、兄に向かって、一歩、また一歩と歩いていく。
ずっと兄に会いたかったのに、いざ目の前にその姿を見ると、どんな言葉をかけて良いかわからない。
お兄ちゃんの苦しさを分かってあげられずにごめん。
とか
淋しかった。
とか
それとも、もう逃げないように抱き付いてしまえば良いのかな。
駆け巡る思いを整理する前に兄の姿は目前に迫ってくる。でも、数々の思いは目の前の会話を聞いた瞬間に弾けて消えた。
「藤堂くん、そろそろ休憩しておいで。」
「はい、ありがとうございます。」
答えた兄は海に向かって伸びをして、その気持ちの良さそうな様子にもムカッとした。
「と う ど う さんって言うんだ。
ひさしぶり。似合わないね、その名前。」
これ以上無いくらいに驚いた顔で振り返った兄を、容赦なく睨みつける。
どうして私は、こんなにも可愛げの無い再会をしてしまうのかな。
仁王立ちした私にただならぬ気配を感じたのか、兄に休憩を伝えた人の良さそうなおじさんは
「訳あり? 藤堂くん、色男は違うねー。」
と、兄をつついて遠ざかる。
「瑞希……」
困惑したように名前を呼ばれて。
本当はそれだけで泣きそうなほど嬉しい。全身が甘く溶けるように、もっとその声を聞きたいと叫んでいる。
でも許してあげない。絶対許さない。
涙を堪えて兄を睨んでいると、兄は困ったように笑った。
「あの辺に座って。お茶淹れるから少し待ってて。」
と、テラス席の端の方を指してから建物の中へ向かって行った。いつもとあまり変わらないその様子に怒った勢いを削がれて席につく。
日陰に入ると暑さはやわらぎ、心地好い風が頬を撫でた。
店先には大きな犬がのんびりと寛いでいる。兄が犬のそばを通るとじゃれついきて、兄は笑って犬の頭を撫でてから店内へ入っていった。
ずっと兄に会いたかったのに、いざ目の前にその姿を見ると、どんな言葉をかけて良いかわからない。
お兄ちゃんの苦しさを分かってあげられずにごめん。
とか
淋しかった。
とか
それとも、もう逃げないように抱き付いてしまえば良いのかな。
駆け巡る思いを整理する前に兄の姿は目前に迫ってくる。でも、数々の思いは目の前の会話を聞いた瞬間に弾けて消えた。
「藤堂くん、そろそろ休憩しておいで。」
「はい、ありがとうございます。」
答えた兄は海に向かって伸びをして、その気持ちの良さそうな様子にもムカッとした。
「と う ど う さんって言うんだ。
ひさしぶり。似合わないね、その名前。」
これ以上無いくらいに驚いた顔で振り返った兄を、容赦なく睨みつける。
どうして私は、こんなにも可愛げの無い再会をしてしまうのかな。
仁王立ちした私にただならぬ気配を感じたのか、兄に休憩を伝えた人の良さそうなおじさんは
「訳あり? 藤堂くん、色男は違うねー。」
と、兄をつついて遠ざかる。
「瑞希……」
困惑したように名前を呼ばれて。
本当はそれだけで泣きそうなほど嬉しい。全身が甘く溶けるように、もっとその声を聞きたいと叫んでいる。
でも許してあげない。絶対許さない。
涙を堪えて兄を睨んでいると、兄は困ったように笑った。
「あの辺に座って。お茶淹れるから少し待ってて。」
と、テラス席の端の方を指してから建物の中へ向かって行った。いつもとあまり変わらないその様子に怒った勢いを削がれて席につく。
日陰に入ると暑さはやわらぎ、心地好い風が頬を撫でた。
店先には大きな犬がのんびりと寛いでいる。兄が犬のそばを通るとじゃれついきて、兄は笑って犬の頭を撫でてから店内へ入っていった。