トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
兄は必死の抵抗を試みるも、みんながビールと泡盛を盛大に飲んだ後では全く歯が立たなかったみたいで。


「藤堂サン、ネクタイもうちょっとだけ緩めて。片膝立てて椅子に座ってくれる?あとは、流し目!」


「無理だ……助けてくれ瑞希」


「あはは、笑いすぎてお腹痛い。」


「次は悩ましげに何か食べて。とりあえず汁を滴らせて!」


そんなの出来るかとゴネた兄に、従業員の人達は「仕事中に彼女といちゃついてたんだって?」「罰ゲームだな」と攻撃の手を緩めない。


結局兄も押しきられる形で注文通りのポーズをつけ、その度にお腹を抱えて笑った。


最終的には胸をはだけて泡盛の一升瓶にセクシーに唇を付けるという、普段の兄からは考えられない姿になっていた。



「あれ? 格好いいっていうより馬鹿っぽい写真ばっかりだなー。サイトには使えねー写真しかないっす。」


「あれ?じゃなくて。

明らかに、最初からわかっててやってただろ。」


「でもこれ、宴会芸としてはなかなかのクオリティーだよ。モデル宴会芸、新しくない?」


「俺がやらされてたのは宴会芸だったんだ……」


ぐったりとして恨めしげな兄が可愛らしい。どうやら兄はここではいじられキャラらしく、堅物っぽい兄の態度は格好の餌食になっていた。



食後には私の誕生会までしてくれて、兄が焼いてくれた可愛いバースデーケーキのろうそくを吹き消す。


周りにはやし立てられるように結婚式の真似事のファーストバイトをして、クリームだらけになった兄の顔にまた笑った。




「楽しかったなー。みんな、すっごく良い人達だね。」

「さっきは酷い目に合ったけどな……」



みんなお酒が回ったのかソファで寝ていたり、それぞれの部屋に帰っているので、自然と兄と私で片付けを担当した。
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