トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
「本当だね、青くて綺麗……

星座とかは分からないけど、この星空は見飽きないなー。」


しばらくの間、波の音を聞きながらぼーっと星空を眺めていた。こうしているとまるで時間が止まっているように感じる。


兄が星空を見上げたまま静かに言った。


「今さらだけど、俺を探して瑞希をここに連れてきたのは篤だよね。」


兄の方から篤さんの話題に触れたのは意外だった。頷くと小さなため息をついて、


「あいつには、一生かかっても追い付けない気がするよ。俺が篤の立場だったら、居場所がわかっても絶対連れて来ないから。」


兄は目を伏せて静かに笑う。


「お兄ちゃんは、お兄ちゃんだもん。篤さんを目指す必要はないでしょ。

キャラだって全然違うし。」


「それでも、俺は篤のように生きたいと思ってる。

自由で、自分には厳しくて、人が悪いくせに人に優しい。」


「篤さんに直接伝えてあげればいいのに。」


「それは絶対嫌だ。」


急に意地を張ったようにそっぽを向いてしまうのがおかしかった。そんなだから、兄は篤さんにツンデレと言われてしまうんだ。


「でもね、篤さんはずっと、ずーっとお兄ちゃんのこと心配してたよ。

お兄ちゃんが居なくなる前も、事件があったときも、そのあとも。」


篤さんだけが、最初から兄の闇を見抜いていた。偽りの平穏を壊して、兄を闇から救い出そうとしていた。


そこまでしてくれる友達は、普通はいないんだから。
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