トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
20 エピローグ
トスカーナ州 フィレンツェにて。
黒須 拓真は先程から鳴り止まない携帯のメッセージ着信音に、眉間の皺を寄せた。
「うるさい」
しかしこの表情は只のポーズである。彼に尻尾でもあれば、それは今パタパタとせわしなく揺れているに違いない。
その証拠に拓真は、あと数分も歩けば居住を移したアパートメントに辿り着くというのに、足早に手近なバールへと向かった。
コーヒーを注文した後、携帯を取り出して苦笑する。
篤:はいさーい!
篤:なんくるないさ~
篤:撮影の待ち時間で暇だ。相手して
篤:モラトリアム満喫中なんでしょ? こっちは毎日仕事だってのに
運ばれたコーヒーに口をつけながら、返信を打つ。
メッセージを送信するとすぐに返信されるので、その応酬は長く続いた。
拓真:この歳でモラトリアムとか言ってられないよ。急にどうした?
篤:俺は特に用事ないけど、拓真の方が俺に言うことがあるんじゃないかと思ってね。 いや、お礼とか別にいらないよ?
拓真:わざわざ催促してくるんだ……
拓真:でも本当に感謝している。ありがとう。
篤:別に拓真の為にやったことじゃないけど。
拓真:それでも篤には、一生頭が上がらないよ。
篤:ふふふ。そうだよね?
篤:あくまで結果的にだけど
お前に絶大な、生涯かけても回収できないくらいの
貸し
を作ってやったことは認めてもいい。
拓真:本当にお前は怖い奴だ。
拓真:ひとつ聞きたいんだけど、どうやって俺の居場所が分かったんだ?
篤:俺にかかればその程度楽勝なんだよ。この俺を出し抜こうなんて100万年早え。
黒須 拓真は先程から鳴り止まない携帯のメッセージ着信音に、眉間の皺を寄せた。
「うるさい」
しかしこの表情は只のポーズである。彼に尻尾でもあれば、それは今パタパタとせわしなく揺れているに違いない。
その証拠に拓真は、あと数分も歩けば居住を移したアパートメントに辿り着くというのに、足早に手近なバールへと向かった。
コーヒーを注文した後、携帯を取り出して苦笑する。
篤:はいさーい!
篤:なんくるないさ~
篤:撮影の待ち時間で暇だ。相手して
篤:モラトリアム満喫中なんでしょ? こっちは毎日仕事だってのに
運ばれたコーヒーに口をつけながら、返信を打つ。
メッセージを送信するとすぐに返信されるので、その応酬は長く続いた。
拓真:この歳でモラトリアムとか言ってられないよ。急にどうした?
篤:俺は特に用事ないけど、拓真の方が俺に言うことがあるんじゃないかと思ってね。 いや、お礼とか別にいらないよ?
拓真:わざわざ催促してくるんだ……
拓真:でも本当に感謝している。ありがとう。
篤:別に拓真の為にやったことじゃないけど。
拓真:それでも篤には、一生頭が上がらないよ。
篤:ふふふ。そうだよね?
篤:あくまで結果的にだけど
お前に絶大な、生涯かけても回収できないくらいの
貸し
を作ってやったことは認めてもいい。
拓真:本当にお前は怖い奴だ。
拓真:ひとつ聞きたいんだけど、どうやって俺の居場所が分かったんだ?
篤:俺にかかればその程度楽勝なんだよ。この俺を出し抜こうなんて100万年早え。