トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
拓真:絶対に分からないようにしたつもりだったんだけどな。今となっては居場所を暴いてくれたことに感謝するしかないんだが。


篤:だからお前の為じゃないって。拓真のためにしたことなんてひとつもない。


拓真:そこは認めないんだ。わかったよ、でもありがとう。


篤:いや、あった! 山ほどお前の為に働いた。お前がキャンセルした仕事を片っ端から穴埋めさせられて。仕事上は大先輩のこの俺様が!!


拓真:それは本当に返す言葉もないよ。悪かった。


篤:敬え。感謝したまえ。


篤:しかもこの前まで撮影してたあの映画、公開時に役者不在ってあり得ないだろ!


拓真:悪いと思ってる。担当の弁護士からもその交渉は相当きつかったと聞いてるし、違約金代わりに映画出演分はノーギャラだったよ。


篤:そうだよ、あの仏頂面の弁護士に交渉を全部投げやがって。そのせいで俺は、山瀬さんの愚痴を永遠に聞き続けるはめになったんだぞ?


拓真:……申し訳ない。そればかりは土下座してもいい。


篤:この詫びに、お前が店を開いたらタダ飯を提供して貰おうか。


拓真:気が早すぎる。それくらいは構わないけどいつになるか分からないぞ。


篤:言ったな? 今の発言は覚えておくよ。

篤:そうそう、ギャラが出ない影響なんだろうな。拓真は友情出演ってことになったから。エンドロールにそう流れるんだよ。


拓真:え?

拓真:友情出演? もっと有名な人がするならまだしも、映画初出演でそれは……


篤:かなり恥ずかしいよな。大御所みたいで偉そう(笑)

篤:“突如として引退したTAKUMAの最後の作品!”
みたいなアオリも付くから。


拓真:うわ……。本気で恥ずかしい。


篤:その恥を忍んでプロモーションの時は顔出せよ。少しくらい帰ってこれるでしょ。


拓真:わかった、考えとく。
< 232 / 235 >

この作品をシェア

pagetop