トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
篤:フィレンツェってどんなものが旨いんだ? 案内と通訳を宜しくね。


拓真:一人なら案内くらいするから、絶対瑞希は連れて来るなよ?


篤:人は変わるものだね。まさかお前からお笑いの前フリ的なヤツを聞けるようになるとは。

「押すなよ、絶対押すなよ!」っていうアレだろ?


拓真:違うから。前フリじゃない。


篤:でも拓真はイタリアにお笑いを学びに行ったと聞いたんだけど。


拓真:なんだよそれ……


篤:先日手に入れた資料の裏付けもある。





メッセージと共に送付された写真にはギャルソンエプロン姿の拓真が写っていた。

足を投げ出すような格好で座り、ネクタイを緩めて胸元は無駄に開かれている。真っ赤なドラゴンフルーツをかじる口元はベタベタと果汁にまみれて、極めつけは悩ましげな熱っぽい視線だ。

沖縄の最後の夜、酒を飲んだ一同の悪ノリの結果だった。


「げふっ」


むせる拓真の耳が赤い。




篤:この写真を見るだけで、どんな疲れも癒される気がするよ。

拓真:何でその写真持ってんだよーーー!!

拓真:瑞希のやつ、その写真をお前に送ったのだけは本気で説教だ。


篤:まあそう怒るな。

篤:拓真が居なくなると淋しいと伝えたら、心を痛めた彼女が送ってくれたんだよ。


拓真:そういうの、瑞希は本気にするから止めてくれ。


篤:本気で淋しいってば。


拓真:分かったから、その写真消しとけよ。


篤:断る
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