トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
至近距離で目が合うと、兄の視線に吸い寄せられた。


画面で見たのと同じ、熱に浮かされたような眼差し。無理矢理お願いしたキスでも、こうやって見つめられるならそれだけでいい。


ゆっくりと唇が触れた。腕の力は強いのに、唇に受ける感触は柔らかくて優しい。



私の心臓の音、聞こえてないかな。苦しいほどドキドキするのに、兄の体温に包まれて、強ばった体がほどけていくようだった。


触れるだけだった唇は、やがて下唇を柔らかく挟まれる。それだけで背中がゾクッとして体を震わせてしまった。



唇が開いたところで、今度は兄の舌が私の舌先を絡めとった。



「んっ………」



舌を撫で上げるように舐められ、柔らかく吸われる。



何度も角度を変えて口の中を舐められ、もうこれ以上されたら体ごと溶けてしまいそうで、思わず唇を離した。



「っ! もう……だめ……」



それでも兄は、顎を強引に引き寄せる。


「途中で止めないって、言ったろ。」
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