トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
背中に触れた兄の手が熱くて身を捩る。


「んっ……。そこはくすぐったいよ……。」



「だって、撮られるくらいなら隠したいと思って。」



大きな手のひらが背中を撫でるように包んだ。



撮影に慣れている兄は、自然にポーズや表情を変えていくので見とれてしまう。



「かっこいいね、お兄ちゃん。」



「馬鹿、こっちを見るな」



兄は照れて、私の頬をかるくつねった。私だって、いつも思っていることを言っただけなのに。



「拓真くん、後ろからやさしく抱き締める感じで」



その指示にドキっとしたのは私だけのようで、兄は言われるままに私を背中から抱き締める。



「んっ……」



カシャッ



またたくさんのシャッターが切られた。


背中に兄の体温を直に感じて、甘いような息苦しいような不思議な感覚にとらわれる。
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