トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
「お兄ちゃんは……余裕なんだね。私はいっぱいいっぱいだよ。」



「そう見えるだけ。全然ないよ、余裕なんて。



でも、瑞希と恋人の設定なんて今だけだろ。



せっかくだからその気分を楽しもうと思ってさ。」



恋人なんて、今だけ。



その言葉にチクっとした痛みを感じたけれど。



確かに今は浸っていたい。



「そうだね。今だけ恋人だね」



もう、眩しいライトもシャッターの音も気にならなくなった。



二人だけでずっとこうしていられたらいいのに。



そう思った瞬間に、



「はい、オッケー」



と声がかかり撮影が終わった。



夢の時間は終わったんだ。
< 50 / 235 >

この作品をシェア

pagetop