トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
「さあ、全部説明して貰いますよ」


事務所で兄が山瀬さんに詰め寄る。



「何よ。ノリノリで撮影したくせに。



普段は見れない可愛い拓真が見れて楽しかったわー!」



「っ……!

それとこれとは話が違います!」



「拓真って、カメラが回ってないと可愛いリアクションだから、好きよ。」



あの兄が良いようにからかわれている。山瀬さんは大人の女性の余裕たっぷりに笑って、テーブルに資料を広げた。



「これが企画書。製菓会社のweb用のショートムービーでね。


こう言っちゃなんだけど、モデルっぽい美人じゃなくて、可愛いカフェ店員みたいなコが良いっていうクライアントの要望で。


こないだ偶然クライアントが瑞希さんを見かけて、この子みたいなイメージって話だったから、今回声をかけたのよ。


まあ、出演って言ってもあくまで篤がメインだから、添え物っぽい扱いだけど。」



「篤が出るんですか」



兄の声が堅い。



「そう。さっきのカメラテストでやってもらったのは篤の代役ね。背格好も似てるし、ちょうど良かったわ。」



篤さん……?


篤さんと、さっきのような撮影をするの……?
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