トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
「そんな、私なんか……!


篤さんを見てると、私なんか場違いも甚だしい気がしてきました。」



「『私なんか』はナシ。


前もそんなこと言ってたけど、瑞希ちゃんは自分の魅力を自覚していないでしょ。


今日俺が分からせてあげるから、覚悟して。」


真顔でそんなことを言われると、どういう顔をしていいのか分からない。


「あんまりからかわないでください。ただでさえ緊張でドキドキしてるのに。」


「からかってるつもりはないんだけどな。



それにこのくらいで照れてたら、この撮影務まらないって。」



「あの、私、今日の内容を殆ど把握してなくて……」



「そうそう。瑞希ちゃんには詳細は伝えない方針なんだ。

守ってほしいのは3つだけ。


それだけ意識すれば良いから。」



「3つ? どんなことですか?」



「一つ目に、声を出さないこと。今回は瑞希ちゃんのセリフは無いから。これは簡単でしょ。


二つ目は、照れないこと。俺の目をじっと見つめて。どうしても辛くなったら視線を外してもいいけどね。


三つ目は、笑わないこと。アンニュイな雰囲気だから、笑顔はなしで。」



忘れないように、心の中で3つのポイントを復唱する。


「が、頑張ります。」
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