トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
篤さんに見惚れてる間に終わるなんて、生易しいものじゃなかった。


例えるなら、毒牙にかかったみたいな感覚。
全身に甘い毒が回ったみたいに、ざわめく気持ちがずっと収まらなかった。



その後も、写真撮影が数カット続いたけれど、どうやって乗りきったのかよく覚えていない。



撮影後には、メイクルームで私が素人の新人だと知ったメイクさんが、


「えぇー? いきなり篤の相手役を貰ったの?


凄いシンデレラガールだね! ねえ、どんなだった?」


と、興味津々につめよられて終わらない質問にぐったりと疲れた。


着替えを終えてスタジオのエレベータを降りると、とっぷりと日も暮れている。
< 59 / 235 >

この作品をシェア

pagetop