トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
………車に篤さんと二人でいるのを想像すると、それだけで心臓がばくばくしてしまう。


「ごめんごめん。警戒するよな。


これ以上瑞希ちゃんに何かしたら拓真に殺されそうだし、誓って、何もしません。


さっきフラフラしてたから心配だし、話もあるし。」


私は自分のことでいっぱいいっぱいだったのに、篤さんは、私のことまで気にかけてくれてたんだ。


「すみません……篤さんの方が、撮影長くて疲れてるのに。ありがとうございます。」



「俺は撮影慣れてるから平気。


飲み物買ってくるから、ちょっと待ってて。」



そう言って帽子を深く被ってカフェに向かう。


途中で、ファンに呼び止められたのか女性と写真を取る姿が見えて、帽子の意味を察した。



篤さん、すごい人気なんだ。その理由も今日でよく分かった。真顔だと近寄り難いような格好良さなのに、笑ったときは周りをぱっと明るくするような優しい表情でいつまでも見ていたくなる。


そして、演技中に見た艶っぽい雰囲気。篤さんは女の子を夢中にさせる魅力に溢れていた。
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