トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
「…………!」
拓真が驚いて振り返る。
「……見つかっちゃいました?」
「もちろん。立ち聞きとは趣味が悪いわねぇ、篤。
私はもう行くから、二人ともごゆっくり。ふふふ。」
ピンヒールの踵を響かせて、山瀬さんが去っていく。まったくあの人は……最悪な状況で拓真と二人にしておいて、自分だけはさっさと行ってしまうなんて。
「……おはよう」
気まずい。
違う、それだけじゃない。拓真に合わせる顔がない。
拓真から一番大事なものを奪おうとしているのに、その拓真とこれまで通りの関係でいようだなんて、虫が良すぎないか。
「前に会ったのは一ヶ月前くらいか。久しぶりだな、篤。」
いつもの調子で拓真が話しかけてくる。俺がうじうじと悩んでいるのが馬鹿らしくなるほど普段通りの拓真だった。
「俺のこと、許せないだろ?」
「ははっ。この前は威勢の良い啖呵をきって出てったのに、何だその顔は。
捨て犬みたいでお前らしくない。」
拓真が驚いて振り返る。
「……見つかっちゃいました?」
「もちろん。立ち聞きとは趣味が悪いわねぇ、篤。
私はもう行くから、二人ともごゆっくり。ふふふ。」
ピンヒールの踵を響かせて、山瀬さんが去っていく。まったくあの人は……最悪な状況で拓真と二人にしておいて、自分だけはさっさと行ってしまうなんて。
「……おはよう」
気まずい。
違う、それだけじゃない。拓真に合わせる顔がない。
拓真から一番大事なものを奪おうとしているのに、その拓真とこれまで通りの関係でいようだなんて、虫が良すぎないか。
「前に会ったのは一ヶ月前くらいか。久しぶりだな、篤。」
いつもの調子で拓真が話しかけてくる。俺がうじうじと悩んでいるのが馬鹿らしくなるほど普段通りの拓真だった。
「俺のこと、許せないだろ?」
「ははっ。この前は威勢の良い啖呵をきって出てったのに、何だその顔は。
捨て犬みたいでお前らしくない。」