トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
どうしてこう真っ直ぐな答えが出せるんだろう。
「うん、俺を許せないままでいい。」
隠したつもりなのに、声がうわずって泣き笑いのような顔になってしまった。
でも拓真はそれに気がつかないふりで、
「良かった」
とだけ言った。
…………
沈黙が気まずくなって、何か話題を探した頃。
携帯を見ていた拓真が、妙に迫力のある笑顔で言う。
「それにしてもさぁ、篤の言ってた『本気でいかせてもらう』っていうのは。」
びくっ。
そのねちっこい言い方、怖いんですけど。
「仕事で公私混同的な?
何も知らない瑞希にべたべた触って?
…………お前このCMで何してくれてんの!?」
「お兄さん、目が笑ってないよ!
てかCM見ないって言ったじゃん、嘘つき!」
「嫌な予感がしたから今見たんだよ。お義兄さんって言うな。篤の兄になるつもりはない!」
「そんな意味で言ってないって……
もう、これあげるから機嫌直してよ。」
「ん?」
「CMしてるチョコレート。ストレイ・シープってブランドなんだって。美味しいよ?」
「絶対いらない。」
「迷える子羊ってネーミング、拓真にもぴったりだと思うんだけどなぁ。
……あ、俺で良ければ食べさせてあげるけど。」
「いらん!」
ぱしっ
手近にあった飲みかけのペットボトルを投げつけられた。「さんぴん茶」と書いてある。いつもながら爺くさい趣味だ。
さすかに悪ノリが過ぎたかと少し反省する。
今度また、飲みに行こう。
拓真とくだらない話をして、旨い酒が飲みたい。
今日の予定が終わったら拓真を誘うつもりだった。
でも、夕方に見かけた拓真は血相を変えて張りつめた様子で、つい声をかけそびれてしまった。
「うん、俺を許せないままでいい。」
隠したつもりなのに、声がうわずって泣き笑いのような顔になってしまった。
でも拓真はそれに気がつかないふりで、
「良かった」
とだけ言った。
…………
沈黙が気まずくなって、何か話題を探した頃。
携帯を見ていた拓真が、妙に迫力のある笑顔で言う。
「それにしてもさぁ、篤の言ってた『本気でいかせてもらう』っていうのは。」
びくっ。
そのねちっこい言い方、怖いんですけど。
「仕事で公私混同的な?
何も知らない瑞希にべたべた触って?
…………お前このCMで何してくれてんの!?」
「お兄さん、目が笑ってないよ!
てかCM見ないって言ったじゃん、嘘つき!」
「嫌な予感がしたから今見たんだよ。お義兄さんって言うな。篤の兄になるつもりはない!」
「そんな意味で言ってないって……
もう、これあげるから機嫌直してよ。」
「ん?」
「CMしてるチョコレート。ストレイ・シープってブランドなんだって。美味しいよ?」
「絶対いらない。」
「迷える子羊ってネーミング、拓真にもぴったりだと思うんだけどなぁ。
……あ、俺で良ければ食べさせてあげるけど。」
「いらん!」
ぱしっ
手近にあった飲みかけのペットボトルを投げつけられた。「さんぴん茶」と書いてある。いつもながら爺くさい趣味だ。
さすかに悪ノリが過ぎたかと少し反省する。
今度また、飲みに行こう。
拓真とくだらない話をして、旨い酒が飲みたい。
今日の予定が終わったら拓真を誘うつもりだった。
でも、夕方に見かけた拓真は血相を変えて張りつめた様子で、つい声をかけそびれてしまった。