トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
6 影
黒須拓真は微睡みの中、髪を撫でられる感触で目が覚めた。


しばらくぶりに、早い時間に帰った自宅。


ここ数日は疲労と睡眠不足が重なっていた。そのためか、自宅に戻った後に気が緩んでソファで寝てしまったようだ。


知らない間に体にブランケットが掛けられていて暖かい。こんな些細なことでも、勿体無いような幸せを感じる。


ふわふわと髪を撫でられる感触が心地よくて、もう少しだけ、と寝たふりを続ける。


「さらさらの直毛で羨ましいな……


んー、けっこう髪の毛固い方なのかも。」


瑞希が指先で髪を遊びながら呟いている。


それは誰と比べてるんだ?


という疑問は飲み込んで、代わりに手にそっと触れた。
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