トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
「俺たちが盗聴器を見つけたことを、犯人に気付かれないほうが良いと思う。

怖いかもしれないけど、我慢出来るか?」


「うん……でもどうして?」


「これを壊して次の手を打たれるよりは、どこにあるか分かっている盗聴器の方がましだ。知っていれば対処できるからな。」


瑞希が小さく頷いた。


「ここを出たら、この話は筆談にしよう。」


風呂場を出ようとしたら、微かな力で瑞希に手を引かれた。


「もう少し、ここに一緒にいて。……お願い。」


涙で濡れた瞳を隠すように、俺の肩に顔を埋める。体はまだ震えていた。


「俺が守るから……」


もう一度強く抱き締めると、瑞希は嗚咽を堪えながら言った。


「お兄ちゃん、ありがとう。ごめんね、CMの仕事は反対してたのに。

私が勝手に進めるからこんなことに巻き込んで……」


「巻き込まれたなんて思ってない。

瑞希は何も悪くない。大丈夫だから。」


背中を撫でると、瑞希は我慢の限界のように声をあげて泣き出した。


シャワーを止めて瑞希にバスタオルをかける。彼女が泣き止むまでの間、壊れ物に触れるように背中を擦っていた。
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