トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
「それは……ごめん。本当に。」


瑞希が俯いたまま微動だにしない。


次第に沈黙が重くなって、


「瑞希……?」


思わず声をかけると、泣き腫らした目を向けられた。


「少しは、私にも……


私にも、欲情した?」


「馬鹿、何を聞いてるんだ」


濡れた瞳のまま、瑞希が怒ったように睨む。


「私には大事なことなの。ちゃんと答えて。」


瑞希にそう言われては、懺悔のように呟くしかない。咽が張り付いたように感じながら、


「それは、俺だって男だから。


勿論、そうだよ。……汚い俺でほんとにごめ」


「謝ってほしい訳じゃなくて。


もうひとつ聞いてもいい? お兄ちゃんは好きな人いるの?」


「好きな人……いるよ。


上手くいきそうにはない人だけど。」


「そうなんだ。

……それなら、その人の代わりでもいいから。


私に触れて。さっきのまま、最後まで止めないで。

抱いてくれたら、お兄ちゃんのことちゃんと諦めるから。」
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