トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
待て。


どうして瑞希が、そんな卑屈なことを言わなきゃならないんだ。…………俺が言わせてしまったのか。


「悲しいことを言わないでくれ。誰かの代わりとして扱われてもいいなんて言うなよ。」


瑞希は睫毛を伏せてベッド片隅を見つめている。


「ごめん。お兄ちゃんは、こんなことを言う妹で悲しいよね。こんな、はしたないことを。」



「瑞希の気持ちが、はしたないわけあるか。


そうじゃなくて……


違うんだ。俺にとって大事な存在だから、瑞希にも自分を大事にしてもらわないと辛いんだ。」


瑞希と目が合わない。体を小さくして、触れられることすら拒否しているように見える。


「瑞希は何も悪くないんだ。


今回は、相手を間違えただけだ。」


何を言っても、彼女を余計に泣かせてしまうばかりで。


「この気持ちが間違いなら、


私、正解にたどり着ける気がしないよ。」


瑞希の言葉は、そのまま俺の気持ちだった。
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