トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
「そうですね、あと少し……2ヶ月くらいで二十歳になるんですけど。」



お酒が飲めるなら、お酒で失恋の痛みが和らぐかどうか試してみたかった。



「俺がいる限り、篤の家で瑞希に酒なんか飲ませるわけないだろ。飲める歳でもだ。」



助手席に座る兄が、ムキになって篤さんに反論する。以前ならこういう過保護な心配をされると嬉しかったけれど、今はざくざくと心を刺される気がした。



保護者の顔で言うだけなら、そんな心配はやめて。



「じゃあ、二十歳になったら改めて乾杯しよう。その時は二人だけで。」



篤さんが後部座席に座っている私を振り返って、満面の笑顔を向けて言う。



「ええと……」


「篤、頼むから前見て運転してくれ。」


「拓真のけち。あとでこっそり誘うからいいですよ。


……もうすぐ着くけど、その前に買い物していい?


家に食べるもの何も無いから、買ってこ。」


スーパーにでも寄るのかなと思って外を見渡すと、篤さんが車を停めた先には、私の想像するスーパーとはおよそかけ離れたお洒落なお店があった。
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