絶対、好きになれない。
初めてのバイク。
後部座席に乗って、
先輩の腰に手を回さないといけないことに気づく。

うわ、密着かあ。

ドキン

「しっかり掴まっててね。」

するっと自然に回された手は
震えることも、拒絶することもなく、
きゅっと彼のお腹で繋がれた。

いや、じゃない。

このひとの優しさが
わたしの壁を溶かしてくれてるのかな。
なんか、麻痺しちゃってる、気がする。

ディレクションを教えると
友達のおうちのちかくだそうで、
彼はバイクを走らせてくれた。

夜道はほんのり涼しくて
気持ちいい風が通り抜けて行った。

あっという間に自宅前に到着する。

『ありがとうございました!』
< 27 / 136 >

この作品をシェア

pagetop