絶対、好きになれない。
「ありがとな。」

授業のチャイムが鳴ったと同時に
叶くんが境目にあった教科書を
わたしの席に寄せてくれた。

『いえ。』

口数の少ないわたしたちの会話。

でも、
わたしにとっては不憫な空気でも、
居心地の悪いこともなかった。

彼も、同じだといいけれど。

隣の席の、クラスメイトとしか
思ってないだろうけど。

「高峰。」

『は、はい?』

席を離れたと思ったら、
叶くんがまた話しかけてきた。
あ、わたしの名前、知ってたんだ。

「今度、ノート貸してくれるか?」

『え、わたしのですか?』

「盗み見するつもりじゃなかったんだが、綺麗な字でしっかりとまとめられてるな、と思って。嫌ならいいけど。」

『ーーーいえ、どうぞ。』

片付けかけていたノートを取り出して
彼に差し出すと
少しだけ微笑んで、ありがとう、と言った。
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