絶対、好きになれない。
#東雲楓side

はじめて声をかけた瞬間に心が奪われた。
そして拒絶されて、なお興味が惹かれた。

綺麗な立ち姿なのに
似合わない眼鏡に制服に髪型に。
見たときに、ものすごい違和感をかんじてた。

この子、たぶん、なにか違うよね、と。

だからはじめてのあの出会いの時に
いろんな意味で確信したんだ。
俺は高峰百合と、なにかあるんだって。

「ごめんね、もうあそぶのやめたんだ!」

すぐに周りの女の子たちに頭を下げて回った。
思いがけないほどの急展開に
自分自身が一番驚いてる。
気づいたら携帯のメモリーの女の子たち、
片っ端から電話しては削除した。

こうして俺と百合ちゃんは「友達」になった。

俺と話していると緊張がほぐれて
楽しそうに笑うのがわかった。
そして、時々その優しさに
ドキドキしてくれているのもわかった。

本当ならはやく抱き締めて
唇を奪って、そのままーーー。

けど、「友達」としても
高峰百合のことを考えたら
それはしてはいけないことだとおもってた。

何度もやんわりと俺を推す。
付き合ってみれば?
彼氏にしてみれば?
でも鈍感な天使は気づきもしないよね。

海でなんかアクション起こそうかと思ってた。

そしたら叶聖とかいうイケメンが
彼女の手を握って愛の告白。

「百合ちゃーん!」

わざといつもより陽気に声をかける。

その声に嬉しそうに振り向く彼女。
その場から立ち去るライバル。

だから、キスした。
動揺させようとおもって。
ほっぺにくらいなら大丈夫だとおもった。

百合ちゃんが、
俺のこと少しだけ好きなのはわかってる。

あとは、俺がどれだけ近づいていくか。
距離をゆっくりと物差しで測りながら、ね。
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