絶対、好きになれない。

【 ぶつかる気持ち。】

叶くんにそう言われて
わたしは黙って頷いた。

どうして?という気持ちで東雲先輩をみる。
いつもなら「百合ちゃん」て
子犬みたいに明るく微笑んでくれる彼は
わたしは視線もくれない。

「じゃ、先輩方お先に失礼します。」

律儀に、叶くんは頭を下げて
東雲先輩たちに声を掛ける。
「気をつけてな」と優しい声をかけてくれる。
わたしも、頭を下げて
東雲先輩のほうに目線をやる。

こちらも向かない。

まただ。
こうやってみんなわたしから離れてく。
けど、もう慣れたことじゃん。
心の中に住んでる
冷めたじぶんが耳元で囁く。

そうだよね、と悲しみに慣れたじぶんが
その言葉に頷いて、
彼に背中を向ける。

あの、笑顔がもう向けられることがないんだ
と実感してしまう。

「あれ?!百合帰っちゃうの?叶は?え?どういうこと?」

「なんか、東雲先輩用事があるから送ってやれないんだって。俺たまたま戻って来たときに声掛けられて、心配だから送ってやってほしいって。だから。」

「あ、そうなの!うん、そっか!百合、あたし、まだもうちょっといたいから、先に帰っちゃって。叶よろしくね!」

愛花ちゃん、うまくいったのかな。
なんだか心が弾んでる。

静かな帰りの電車。

あんなにウキウキしてたのに
帰り道で哀愁を感じてしまってるからか
窓から見える綺麗な景色さえ、
さみしげに感じてしまう。
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