佐藤さんは厄介だけど…
初めて佐藤さんと話した日から1週間が経った。
この日もまた佐藤さんは来店する。
「いらっしゃいませ。」
「こんにちは。」
相変わらず、爽やかな笑顔での登場だ。
待ってましたと言わんばかりに奥様方がコソコソながらも一斉に振り向く。
私はおしぼりとお水を持って佐藤さんの所へ行った。
「いらっしゃいませ。」と言い、お冷とおしぼりを置いた。
「ありがとう。僕のこと、覚えてる?」
座り直しながら、少し冗談めかしく佐藤さんが聞いてきた。
「あっ、はい。もちろんです。佐藤さんですよね?」
「良かった。知らないって言われたらどうしようかと思ったよ。」
「佐藤さんは常連さんですから。嫌でも覚えますよ。」
「嫌でもって…。冬雪ちゃん、酷いなー。」
「そういう意味で言ったわけじゃないですよ!」
酷いと言われ、慌てて訂正した。
「ははは、分かってるよ。じゃあ、いつものお願いできますか?」
佐藤さんの笑顔を間近で見たせいか、ハッとした。ハッとした、というより、ドキッとした、が正しいのかもしれない。こんなにも綺麗に笑うことができる人ってなかなかいない。
そんなことを思いながら「かしこまりました。すぐ準備いたします。」と言い、帰ってきた。
そういえば、佐藤さんって冗談も言うんだ。
佐藤さんの意外な一面が見れたと思いつつ、店長に「佐藤さんいつものでーす」と大きな声で言った。
もちろん、もう作り始めてたので、言わなくても良かったのだが。