赤い刻印 - Secret Love -【続編】
「先生のお母さんの?」
「そう。婚約指輪ね」

つまり先生のお父さんが亡くなったお母さんにあげた婚約指輪、ってことだろうか。

「こんな大事なものもらえないよ!」

慌ててジュエリーケースをおばあちゃんのほうに押し返した。

「遺言だったのよ。いつか明仁の結婚相手に渡してほしいって」
「でも私たちまだ…」
「迷惑かしら?それを渡せただけでも役割を果たせた気がするのよ」
「迷惑だなんて。嬉しいけど…」

おばあちゃんの気持ちは嬉しいけど、結婚なんて一度も話題に出たことがない。
先生の気持ちすら分からないのに。



病室を出ると先生のお父さんが笑顔で立っていた。

「一沙ちゃん。今日は悪かったね」
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