赤い刻印 - Secret Love -【続編】
病院内は禁煙だったからずっと我慢していたんだろう。
考え事をしているとタバコの本数が増えること、私は知ってる。

「そんなに悪い状態なの?」
「進行がんで年齢も年齢だしな。覚悟はしてくれって言われたみたい」
「…」

前を向いたまま淡々とそう言う先生。
だけどその表情から不安が伝わってきて、思わず運転している先生の太ももに触れた。
不安を少しでも和らげてあげられるように。

「あ、一沙の実家寄ってくだろ?」
「うん…。寄ってけと言われてるから」
「俺も行くわ」
「いいよ、先生は」
「少し挨拶するだけだよ。手土産持ってきたし」

そう言って後部座席に置いてある袋を指差す。
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