十色スタッカート
私の苗字を呼んだ彼に少しだけ違和感。
だって昔は、小学生の時は私の事を「みどりちゃん」って呼んでくれてた。
その時のイメージが色濃く残ってたから、急に苗字で呼ばれて背筋が伸びる感覚になる。
一線引かれた感じ。
「もう取って来た」
掴まれた腕によって引き止められた私は、龍司君が机の中から取り出した日誌を見て焦った。
彼の現在の見た目とは大幅に異なる行動。
「日直とかチョーだりぃ」って言ってサボりそうなのに、私よりも早く登校して日誌まで取りに行く生真面目さっぷり。
こ、これが俗に言う『ギャップ萌え』と言う代物か。
こうして見るとやっぱり昔の龍司君に似ている。行動が早くて考えるより先にまず動く。
私に無いそんな所が彼の魅力でもあった。