十色スタッカート
私はついつい頭の中で色々と考えちゃうから行動に移すのが人より遅い。
だから尚更、光の速さで動き回る龍司君に恋したんだと思う。
私に無い魅力に惹かれて。憧れに近い形で。
「あ、ありがとうございます……」
「……おう」
忘れててごめんって謝りたかったけど、私の口からはやっぱり出ない。
何とか彼と打ち解けたいのに。
睨まれる存在じゃなくなりたいのに。
「……」
「……」
昔は私が黙ってると龍司君が色々と話しかけてくれた。
朝食の話とか昨日見たテレビの話とか。
今思えばどうでも良い内容だったかも知れないけど、あの頃はそんな彼の話が面白くて毎日が楽しみだった。
今日はどんな話をしてくれるんだろう。と考えるだけで学校に行くのが楽しかった。