十色スタッカート
唯一の失敗はつい昔のクセで彼の事を『龍司君』と呼びそうになった。
彼が本当に私の知ってる龍司君なら問題無いのだけど、もし仮にただのそっくりさんだった場合、いきなり隣の女から名前で呼ばれたらドン引いて再び睨まれる羽目になる。
それだけは何としても避けたい。
「……この前拾ったんだよ。野良のちっさい奴」
「…捨て猫?」
「分かんね。家の近くの公園で鳴いてた」
龍司君は動物が好きだったのを思い出した。
小学生の頃に飼育してたウサギのお世話も彼は率先してやってて、みんなが嫌がる汚れた掃除も難なくこなしてた。
猫か犬を飼いたいって私に話してくれた事もあった。
だけどお父さんが動物嫌いで中々飼えないんだって悲しそうに言ってた。
「…動物好きなの?」